AIWA HP-AK100
ドライバの交換とヘッドバンド周りの補修、イヤーパッドの交換と洗濯を行います。
HP-AK100
アイワのフルオープンエアヘッドホンのHP-AK100です。
フルオープンという事で、ドライバの周囲が全開放になっています。外から見ると普通のオープンエアに見えます。
ドライバの取り外し
イヤーパッドとその付近の取り外し
イヤーパッドの内側に指を入れ、外に引っ張りながら引っかけている部分を外していくと、パッドが外れます。その下のネジ3本を外します。
パッドが付いていた部分が外れました。
外枠中央の取り外し
ドライバが中央に実装されています。その横からハウジングの支えを通って右側に向かう音声ケーブルがあります。ドライバの根元に付近に外枠の爪が3つ隠れています。
爪を適当な棒で押すと、外枠が少し浮き上がります。
浮き上がってできた隙間にヘラを差し込んで、テコで持ち上げると外枠が外れます。
外枠の内側には布のような物が付いています。内部には外からのケーブル、左スピーカーへのケーブル、右スピーカーへのケーブルが付いている基板が見えます。
ドライバの取り外し
ドライバのカバーを外す
ドライバにカバーが掛かっているので取り外します。
後ろ側からつまようじの背中を使って、カバーが引っ掛かっている端の部分を押し出します。ある程度外れたら、表側から指でカバーを引っ張ります。
カバーが取れました。
カバー内側に音質調整用のスポンジが入っていますが、劣化して崩れているので除去しておきます。ピンセットでつまんだりブロアーで飛ばしたりしながら掃除しました。このドライバを流用する場合、丸い隙間から見える振動板を傷つけないように気をつけます。
ドライバの取り外し
ドライバは3カ所の爪と接着剤で固定されています。どこか1カ所の爪を軽く持ち上げて外した状態を維持し、後ろから金色のマグネットを押してドライバを外します。ある程度の力は必要ですが、外すと同時にケーブルを引きちぎらない程度に力を抑えます。
ドライバが外れました。
ドライバの配線外し
ドライバの配線です。プラス側に赤いラインが入っているので分かりやすいです。左側と同じ要領で右側も分解しています。
ケーブルは赤色がプラス、銅色がGNDになります。
端子にハンダごてを当てて、溶けたところで線を引っ張れば線が外れます。
53mmのドライバ取り付けと組み立て
00年代に販売されていたオーディオテクニカのオープンエア型中位機種、ATH-AD700のドライバを取り付けます。
AD700の方が若干ドライバが大きいです。
配線
プラスとGNDの線をドライバの端子に配線します。AD700は赤点のある方がプラスです。
取り付け
AD700の方がドライバは大きいのでテープで固定しています。元のカバーの代わりに100円パッドをかぶせておきました。
組み立て
外枠をはめ込みます。3本の爪を穴に差し込むだけで固定されます。パッドが付いてたプラスチックの枠を取り付け、ネジを3本締めます。
最後にイヤーパッドとを取り付けて組み立て終了です。
通常の取り付け位置の手前にドライバを固定しているのでドライバが近くなり、若干耳にスポンジが当たります。オーテク製ヘッドホンは元々ドライバの位置が近いので、元の状態と比べても違和感は少ないと思います。
50mmのドライバ取り付けとドライバの分解
ここで取り出したドライバを移植してみます。
DJ PRO 2000Sのドライバはカバーが付いていないのでAK100のドライバに付いている物を流用します。とりあえずカバーの丸い穴にヒモをかけて引っ張ってみましたがビクともしません。
プラスチックのドライバカバーの取り外し
側面をニッパーでカットします。
側面をカットすると接着部分が見えるので、そこにカッターを差し込んで一回り切れ込みを入れます。
カバーが外れましたが、それに張り付いていた振動板も一緒に剥がれてしまいました。
ドライバの分解
少し脱線してAK100のドライバを分解してみます。
端子から伸びてきた細い線が振動板の中央に何重にも巻かれています。その細い線が巻かれている部分がマグネットに収まりまっています。マグネットの周囲にはいくつもの穴が開いており、そこから逆相の音が出ていきます。
振動板に伸びている線は、側面の溝を通り、そこは接着剤で保護されています。どのヘッドホンでも同じような作りになっているので、この部分にダメージを与えないように気をつけます。ここが断線すると修理は大変です。
マグネットを内側から指で押すと外れます。二重構造になっており、内側にマグネットが納められていて、内側は磁力が強く、外側は磁力が弱いです。
振動板のへこみ修理
もう片方のドライバは振動板を剥がすことなくカバーが外せました。しかし、画像で囲った部分がへこんでいます。振動板がへこんだままになると音量が小さくなるなどの問題が起きます。
へこんだ場所に粘着力の弱いテープを乗せるように貼り付け剥がすと、振動板のへこみが直ります。一回で直らない場合は何度か行うとよいです。
他のヘッドホンでも同様に直せますが、分解時に破損しやすい今回のAK100など機種によっては難しいです。
ドライバの取り付け
両方のドライバのカバーを外し、接着剤はジッポオイルで掃除しておきました。
PRO2000Sのドライバにカバーを乗せてみると、内周には収まらず、外枠に乗る形になっています。内周に収まると外す時に振動板ごと取れる可能性もあるので、この方が都合がよいでしょう。
配線とドライバの固定
PRO2000Sの端子は、左右共に画像右側がプラスです。配線時に振動板が他の物に当たらないように気をつけます。配線を済ましたらハウジングの枠にはめ込みます。元のドライバとほぼ同じ大きさの約49.8mmだったのでそのままぴったり収まっています。
取り付け後、振動板にへこみがあるか目視で確認し、あれば直しておきます。今回は4カ所へこみがありました。
配線時、周囲の枠にハンダごてを当ててしまい溶かしてしまいました。しっかり対象を固定して、周囲にコテが当たらないような位置取りにしてハンダ付けを行った方がよいです。
ドライバを左右取り付けました。
振動板のカバー
振動板のカバーを取り付けます。ドライバを固定する爪をよけた周囲3カ所をホットボンドで固めます。爪をよけたのはホットボンドを剥がす時に面倒そうだからです。
スポンジ
カバーを取り付けたら100円パッドをかぶせておきます。
あとは元通り組み立てれば交換完了です。
劣化したヘッドバンド周りの補修
ヘッドバンドは伸びたままになり、左右をつなぐパイプの外殻は崩れかけ中のケーブルが見えてしまっています。
ヘッドバンド
伸びたままのヘッドバンドを修復します。
取り外し
側面内周のネジを外します。左右1本ずつあります。
ヘッドバンドが外れました。
分解
ヘッドバンドに付いているネジはNo0のドライバ(精密ドライバ)が必要になります。
バンドの中にある伸縮部を引き出してみると、左側の先端が切れてしまっています。これが原因でバンドが伸びきった状態になっていたようです。
中の部品を引き出してみると、中央にゴムバンドが付いており、それを左右で引っ張る形になっています。
組み立て
原因が分かったのでゴムバンドを戻す事にしますが、そのままでは入りません。
そこで使うのが100円ショップの園芸コーナーなどにある針金をビニールで覆ったヒモです。これをバンドに通します。このとき針金ヒモは本体から伸ばしたままで、切らなくても大丈夫です。
ゴムバンドの端が輪っかになっているので、そこに針金ヒモを通して折り曲げます。針金ヒモはねじって固定しますが、ねじると通らなくなるので、折り曲げて固定するだけで十分です。その状態で引っ張ればゴムバンドが中に戻ります。
ヘッドバンドを外す時、一番初めに外した部品はそのまま付けておきます。これがないと端がそのまま中に入ってしまいます。この部品は柱に輪っかを引っかけて固定しているだけなので簡単に外れます。
片側から出ている針金ヒモを適当な長さで切り、引っ張ります。引っ張ったまま、切れたヘッドバンドの部品に針金ヒモを三つ折りぐらいに巻き付けて固定します。ねじって固定したいところですが、動かなくなりそうなので折りたたむ固定にしています。ヒモを引っ張らずに固定すると、戻る力が働かなくなります。
固定が済んだら中に押し込んで、小ネジを締め直してバンド修復が完了です。
アーム
金属アームを覆うチューブが崩れかけているので交換します。ATH-AD700の物を流用します。
取り外し
ヘッドバンドの固定部を外すと、金属アームも取り外せるようになります。このアームの先端はL字になっており、それが引っ掛かって固定されています。
金属アームを外しました。左右のハウジングは音声ケーブルだけでつながっています。
ATH-AD700のアーム
AD700のアームはそのまま装着できました。しかし、AK100よりも若干短いようで窮屈です。
AD700も端はL字なっているのでペンチで曲げます。これでチューブが外せるようになりました。
AK100のアームにチューブとを取り付けます。AD700のチューブはAK100の物と比べて細いですが、L字の先端のままで無理矢理通す事ができました。
左右を結ぶ音声ケーブルの取り外し
左右どちらの基板でもかまいませんが、配線が少ない右側ハウジング内の基板の線を外す事にします。
中央の2本の線を外します。
横の穴からハウジング内部に入ります。ハウジング内部からハウジングを支える部分を通ってアームの方に伸びていきます。
ハウジング支えを通る線は外しにくいので、バンド固定部付近の線を緩めて外していきます。
右側に向かう線が外れました。
左右を結ぶ線をアームに通す
バンドの時と同じようにチューブに針金ヒモを通します。通したら先端を音声ケーブルに結びつけます。
音声ケーブルと金属アームを通します。
失敗例
最初はアームのL字部分に音声ケーブルを結びつけて一緒に通しました。しかし、出てきた先には音声ケーブルが付いていません。
音声ケーブルが途中でL字から外れて詰まってしまったようです。この状態で金属アームを引き出す事もできず行き詰まりました。
仕方なくL字を曲げようとしましたが、AD700の物よりも固くプライヤーで押さえてペンチで曲げました。曲がる時にパキッという折れたような音が鳴り、終わったかと思いましたがかろうじてつながっているようです。これでアームが外せるようになりました。
今度は結び目にホットボンドを付けて補強してみましたが、すぐに外れました。結局上の針金ヒモを使うやり方にしています。
金属アームの取り付け
左側側面内周の固定部です。とりあえずヘッドバンドは付けずに固定しています。
AD700のアームの方が若干短いため、チューブの長さも少し足りません。そこで元のチューブの無事だった部分を短めに切り出し、それを端に付けて長さを補います。
音声ケーブルを元通り通し、ふたをしてネジ止めしておきます。曲げたL字はしっかり曲げると折れそうなので少し曲げる程度にして取り付けました。
ハウジングを横から支えている部分は、外側に引っ張ると外す事ができます。
配線
ハウジングを支えている部分の隙間に線を通していきます。
ハウジング内側にある小さな穴に線を通します。2つの線をよってまとめれば意外と簡単に通せます。
基板に元通り配線します。
補修終了
見た目がボロボロだった金属アームもきれいになりました。継ぎ足した部分もあまり違和感がありません。
ヘッドバンドが伸縮するようになり、前の状態よりフィットするようになりましたが、やや窮屈になった感じもします。
切れたヘッドバンドの補修
切れたバンドの代用品を作成し、上の補修と同じ要領で分解組み立てを行います。
補修したバンドですが、しばらくすると根元から切れました。代わりに、いろいろな製品のパッケージで使われているブリスターパックから代用品を作成します。食料品に使われている物はあまり強度がないので他の物から作成した方が良さそうです。
切れたバンドの反対側をあてがって線を引き、切り出します。
まずはキリやドリルで穴を開けて、リーマーで広げます。手間はかかりますがニッパーでも可能です。固定部品の丸い出っ張りに取り付けられればOKです。
長方形の穴を開けます。ここを開けておかないとバンドを伸縮させる事ができません。
ヘッドバンドのガワ両端にネジ止めする溝がある部品を通せるか確認します。通せない場合は端を切り取ります。
上の補修と同じ手順で組み込んでから、ゴムバンドをホッチキスで固定します。
修理が完了しました。
土台の一部をカットするドライバ交換
ドライバを固定する土台は50mmのドライバのみ付けられますが、それを除去して他のサイズのドライバも付けられるようにします。
左側の土台のカット
ドライバを取り外します。
ニッパーで土台の出っ張っている部分をカットしていきます。カットした破片が飛んできて危ないので、メガネなどで目を保護してください。
周囲のカットが完了しました。しかし切断面がデコボコなので、大きめの出っ張りはニッパーでカットし、細かな分はヤスリで形を整えます。指でなぞれる程度にすれば十分です。
土台のサイズ
土台の大きさです。カットした先端は外に広がるようになっていたので、根元付近よりも若干大きい53mmでした。内周が40mmなので下は40mmから上は50mmまでのドライバが付けられそうです。
土台の足はこんな具合になっています。
53mmドライバの取り付け
上で出てきたAD700のドライバです。先端が付いている時はちょうど53mm同士でぴったりでしたが、土台は50mmなのではみ出てしまいます。
とりあえず端子にハンダ付けを行います。ケーブルは内側に出すので、ケーブルを画像のような向きにしてハンダ付けしました。
ハンダ付けをしたドライバを土台に乗せました。土台が完全に隠れてしまっています。
ドライバをホットボンドで固定します。土台が隠れているので非常にやりにくいですが、ホットボンドの先端が土台とドライバの間に届くようにうまく傾けて作業します。周囲を完全に固める事はできませんでしたが8割程度はホットボンドが付いています。
仕上げに100円パッドをかぶせて、片側の交換は終了です。ハンダ付け後にホットボンドによる固定があるので、両方まとめてやらず、片側ずつ作業した方がよいでしょう。
右側の土台カット
少しやり方を変えてみました。
ニッパーで周囲一定間隔で切れ込みを入れました。そこをペンチでつかんで前後に倒すなど動かしてねじ切ります。ひとまず上段部分だけ切り取ります。
下段部分も同じようにカットします。土台部分はそんなに頑丈そうでもないので、ペンチでねじ切る時は他の部分に負荷がかかりすぎていないか気をつけます。最初の適当に切った時よりうまく土台をカットできました。
あとは同じようにドライバを取り付けて終了です。
少々面倒ですが53mmドライバの取り付けもできました。最初の先端に取り付けた時と比べて、ドライバと耳に適度な距離ができてより良くなりました。
イヤーパッドの交換と洗濯
イヤーパッドはハウジング外周の溝に引っかけて固定します。この外周付近は厚みが異なります。
ハウジングの大きさは100mmです。この大きさに近いヘッドホンのパッドを流用する事ができます。
他機種のパッドの流用
Pioneer SE-M290のパッド
取り付けは少々きつめですがSE-M290のパッドが使えます。元のパッドと似たような装着感になります。
STAX SR-007のパッド
こちらは若干大きさに余裕があるSR-007のパッドです。
パッドのつけ置き洗い
汚れたパッドを洗濯します。
適当な容器(今回はジャムの空き瓶)に洗濯用粉洗剤を少々とワイドハイターEXを20ml空き瓶に入れます。
20mlはキャップに目印があったのでその容量にしています。
パッドを入れてお湯を入れます。パッドが浮き上がるので、お湯はギリギリまで入れます。
フタを閉めてよく振ります。そのまま3日ほど放置します。
3日後
中の水を捨てて元の容器を使ってすすぎます。瓶に入れた水の色が変わらなくなったらすすぎ完了です。パッドにダメージが行きそうなので雑巾絞りのようにねじったりはせず、両手で挟み込むようにして水を絞り出します。
パッドをつるして乾かします。今回は上で出てきたマグネットがあったので金属台に貼り付けています。つるしていると下の方に水がたまるので、指でつまんで水を出しておくと乾くのが早くなります。
1日後、パッドが乾きました。洗濯前と比べると真っ黒になっています。