eSATA PCカード(IFC-CB2ES)からのOS起動
PCカードからOSの起動を実現する機能を持つIFC-CB2ESを使い、外部の記憶装置からWindows XPの起動を行います。
OSの起動ができるPCカード
ノートPCにはExpressCardやPCカードといった機能拡張スロットがあります。一部のExpressCardを搭載した機種では、ExpressCardに接続した記憶装置からOSの起動が可能な物もあります。しかし、PCカードのみを搭載する古い機種ではPCカードからのOS起動はできない物がほとんどです。
BUFFALO製カードバスPCカード用eSATAインターフェースIFC-CB2ESはPCカードでは珍しくブート機能を持っています。今回はこの機能を使ってノートPCでANS-9010から起動してみます。この製品は既に販売終了品で中古でしか入手できません。
OS起動までの流れ
PCIのSATAのインターフェースカードにはブート用のBIOSが実装されており、それを経由して接続した記憶装置からOSの起動ができます。しかし、IFC-CB2ESにはブート用のBIOSはありません。
ではどのようにブート機能を実現してるかというと、以下のような流れになります。
- 光学ドライブに付属のCDをセットしてCD起動をする
- CDの起動メニューからHDDの先頭領域にブートプログラムを書き込む
- そのHDDから起動する時にまずブートプログラムが読み込まれる
- 「内蔵HDDから起動」か「eSATAカードを認識して外部ドライブからの起動」を選択
- 後者を選択した時にeSATAのドライブから起動
といった具合に、HDDに細工をしてブートBIOSの代わりになる機能を組み込み、それを使ってPCカードからのOSの起動を行います。
なお、ブートプログラムが組み込まれたHDDは、eSATA機器からの起動時は使用できません。そのHDDからの起動時は普段通りにeSATA機器は認識されます。また、ブートプログラムを削除する事も可能です。ブートプログラムを組み込んだHDDをフォーマット時はブートプログラムも削除されます。
テスト環境
ノートPC
2005年頃に販売されたIBM Thinkpad T42でセットアップを行います。スペックは以下の通り。
CPU | Pentium M 765 (2.1GHz) |
---|---|
チップセット | Intel 855PM |
カードバスコントローラ | TI PCI-4520 |
eSATA外付け機器
eSATAドライブは26Gのメモリを積んだANS-9010を使います。
導入の流れ
IFC-CB2ESからOS起動をするためのセットアップ手順として、2パターンが考えられます。
Windowsのインストールディスクを使ったセットアップ
外付けの機器にOSを新規インストールする手順です。
- 事前にSiI3512のドライバをFDDにコピーする
- 付属CDよりCDブートを行う
- 内蔵HDDにブートマネージャを組み込む
- ブートマネージャを組み込むプログラムからWindowsのCDを起動
- Windowsセットアップ時に1で作成したドライバを導入する
- 通常のWindowsのセットアップを行う
- 最初の再起動以降は内蔵HDDのブートマネージャ経由で行う
IFC-CB2ES付属のMigrateEasyを使ったセットアップ
既にOSのセットアップがされたHDDから、外付け機器に丸ごとコピーをする手順です。
- 内蔵HDDのWindowsにSiI3512のドライバをインストール
- MigrateEasyで内蔵HDDをeSATA機器にコピー
- 付属CDからCDブート
- 内蔵HDDにブートマネージャを組み込む
- 再起動して内蔵HDDのブートマネージャからeSATA機器を起動
Windowsのインストールディスクを使ったセットアップ
SiI3512用ドライバの用意
SiI3512用のドライバはWindows XPのCDに含まれていないため別途用意する必要があります。この手順ではフロッピードライブが必要になります。
SiliconImage公式ページからSiI3512用のドライバをダウンロードして解凍してフロッピーにコピーします。そのままフロッピーは接続したまま、CDドライブに付属CDを入れて再起動します。起動の優先起動順位があるのでノート独自のブートメニューからCD起動します。
ブートマネージャのインストール
付属CDから起動するとこの画面になるのでブートマネージャのインストールを実行します。この時ノートPCにHDDが入っていないとHDDが見つからないとエラーになります。ブートマネージャのインストールは一瞬で終了します。
Windows XPのインストール
このブートマネージャのメニューからWindowsのインストールCDを起動します。内蔵したHDDのパーティションを隠しセットアップに影響しないようにします。
ブートマネージャのメニューでCD起動を選ぶと左の画面になりますので、ここでCDをインストールディスクに交換してEnterキーを押します。その後注意画面が表示されますが準備したドライバを組み込めれば問題ありません。
インストールCDの実行中青い画面に切り替わると、まず左下にこのように「F6を押せば追加ドライバが入れられる」と出るので、ここでF6を押しておきます。間に合わなかったり忘れた場合は付属CDからの起動からやり直します。
F6を押してからしばらくするとこの画面になるので画面の指示に従いSキーを押します。
インストールドライバを選択します。「WindowsXPと2003」か「2000」のどちらかから選んでEnterを押します。
一つ前の画面に戻るので今度はSでなくEnterを押して次の作業に進めます。
あとは通常通りのWindowsのセットアップになります。パーティションを作成しフォーマット、セットアップファイルのコピーが行われ再起動します。
セットアップ中に自動で再起動されますが、直接外付け機器から起動はされず内蔵のHDD経由でブートマネージャに切り替わります。eSATA HDからの起動を選択し、Windowsのセットアップ手順を進めていきます。
今回は色々統合したDVDからインストールしましたが、それらの項目のセットアップで強制再起動やエラーで導入されない物があったので、SPだけ統合した物などシンプルなディスクを用意した方がいいかもしれません。.NET Frameworkのセットアップで再起動になるのでスキップしたら最後まで進みました。
MigrateEasyを使ったセットアップ
SiI3512のドライバインストールされたWindowが入ったHDDからMigrateEasyで丸ごとコピーします。
コピー後に付属CDから起動してブートマネージャを導入します。
再起動をしてブートマネージャからeSATA機器の起動が行えます。ここで自動起動の設定をすると、次から右側の画像の画面が起動時に一瞬出るので、設定を変えたい場合はここでShiftを押せばできます。
eSATA外付ドライブ(ANS-9010)からの起動
OSのインストール後、ANS-9010から起動してみると元々のHDDと比べ読み込みなどの動作が速くなり快適です。
環境によって速度が十分出る場合とそうでない場合があるようです。詳しくはカードバス接続eSATAカード(SiI3512)のデータ転送速度で扱っています。
ベンチマーク
内蔵HDD(ST9160821A相当品)のベンチマーク結果です。
この通り結構な差が出ています。
内蔵ドライブの扱い
上でも触れたようにPCカード経由でOSの起動を行うと、ブートプログラムが組み込まれた内蔵HDDは認識されていますが、ドライブレターが割り当てらずアクセスする事はできません。
ANSから内蔵HDDにデータを戻す
今度は逆にANSから内蔵HDDにデータを戻してみます。MigrateEasyを使ってANSから内蔵HDDへコピーするように指定して再起動します。
再起動時にブートマネージャでANSから起動を行いMigrateEasyのコピーを実行します。この時点で内蔵HDDのブートマネージャが削除され、再起動後は内蔵HDDから起動するようになります。
内蔵HDDから起動をすれば当然両ドライブが認識されます。付属CDからブートマネージャをインストールすればまたANSから起動ができます。もしデータを消した場合はMigrateEasyで移してから行えばOKです。