FOUR CHANNEL FD-20
コンデンサとオペアンプ交換を行います。
外観と仕様
24bit/96kHz対応のUSB-DACです。
前面は電源ボタンにボリュームとヘッドホン用6.3mm標準ジャック、赤LED(電源)・緑LED(USB接続)があります。後ろは12V電源入力にRCAライン出力と同軸デジタル出力があります。入力端子はUSBのみで光/同軸デジタル入力はできません。
側面には薄い溝、背面はゴム足が貼り付けてあります。
仕様
RCAライン出力 | |
出力インピーダンス | 100Ω |
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最大出力電圧 | 2Vrms(2kΩ) |
周波数特性 | 20~20kHz(+0.4 -0.5dB) |
全高調波歪率 | 0.003%(1KHz 1Vrms) |
S/N比(A weighted) | 100bB |
ヘッドホン出力 | |
最大出力 | 75mW(THD 0.2% at 32Ω) |
周波数特性 | 20Hz~70KHz(±0.5dB) |
全高調波歪率 | 0.004%(1KHz 1Vrms at 32Ω) |
S/N比 | 90dB |
チャンネルセパレーション | 95dB |
USB入力 | |
サンプリング周波数 | 8/16/32/44.1/48/96kHz(16/24bit) |
インターフェース | USB full speed(USB2.0/1.1) |
同軸デジタル出力 | |
サンプリング周波数 | 32/44.1/48/96kHz |
フォーマット | IEC-60958 SPDIF |
本体周り | |
サイズ | H48mm x W96mm x D121mm(突起物除く) |
質量 | 約450g |
電源 | 12V/1A |
OEM?
基板を取り出すと、電源ボタン付近に社名、オペアンプのそばに型番が記されています。このUSB-DACは同等の製品がいくつかありますが、DKL DA-90がOEM元なのかもしれません。
- DKL DA-90BK(前面の表示はDA-90)
- Soundfort DS-100(DA-90BKの名称変更品、前面の表示はDS-100)
- FOUR CHANNEL FD-20(前面の表示はFD-20)
- ニュースペースデザイン FD-20 Basic(前面の表示はFD-20)
- ニュースペースデザイン FD-20 Jazz(BasicのオペアンプをLME49720に変更)
- ニュースペースデザイン FD-20 Pops(BasicのオペアンプをNJM5532DDに変更)
- 上海問屋 DN-82544(前面の表示はFD-20)
分解
FD-20はオペアンプの交換が可能ですが、本体を分解する必要があります。
オペアンプ交換までの分解
後ろは端子付近のネジ2本だけ外します。前は4隅のネジを六角レンチで外します。
ネジを外すと基板を取り出せます。ソケットに装着されているオペアンプの交換ができます。
ケースの内側に溝があり、そこに基板を差し込み、前後をネジ止めして固定されています。
前面パネルの取り外し
ボリュームノブはネジで固定されているので外します。
ボリュームがナットで固定されているのでモンキーレンチなどで少し緩めて、あとは手で回して外します。
何か作業をする場合、ネジなどをなくす前に仮止めした方がよいでしょう。
組み立て
ボリュームノブは奥まできっちり押し込んでからネジを締めると、回した時にゴリゴリこすれます。少し浮かせた状態でネジを締めればスムーズに回せます。
ケースのネジを止めをする時、始めに前面パネルのネジを軽く回して仮止めし、そのあと後ろのパネルのネジ2本を締めます。先に前のパネルをしっかり固定すると、遊びがなくなって後ろのネジが回せなくなる事があります。
基板と実装部品
基板の裏表です。画像クリックで拡大します。
実装部品
USBコントローラーのTE7022LとD/AコンバーターPCM1798です。PCM1798はPCM1794の下位モデルで192kHzまで対応していますが、TE7022Lの仕様による制限で96kHzが上限で88.2kHzに対応していません。
PCM1798は作動電流出力タイプのDACで、オペアンプのNE5532Aを2つ使ってI/V変換を行います。そのあとOPA2134がLPFとBufferを担当します。オペアンプを通った音声信号は、RCA端子とヘッドホンアンプに送られます。表側は水色のオーディオ用金属皮膜抵抗が多数使われています。
DC/DCコンバータのMCW03-12D15で±15Vを精製してオペアンプに供給しています。オペアンプの動作電圧上限は±15Vちょっとの物が多いので、この高い電圧はオペアンプの力を引き出してくれそうです。ヘッドホンアンプにはTPA152が使われています。
DACに供給するクロックを精製し、音質に影響を与える12MHzのTCXO水晶発振器です。ボリュームはAカーブ20kΩのボリュームで、付け根からケースへのアース接続が行われています。
バイパスとフィルタは周波数特性に優れたPPSフィルムコンデンサやWIMAのコンデンサが使われています。
電解コンデンサーは低ESR・長寿命のRubycon ZLH、Rubycon YXFの2種類のみ使われています。インダクタはTDK TSL0808Sの100uHです。
RCAライン出力手前にリレーのTX2-12 ATX203、同軸デジタル出力手前にパルストランスのPE-65612NLが付いています。
24C08ANはデバイス名などが保存されているEEPROMです。USBコントローラのそばにTIのLC14とLC04AというTI製のチップが実装されています。
コンデンサ交換
ヘッドホン出力直前のコンデンサを交換します。6.3V 220uFが2つで、位置は6.3mm端子のすぐ横になります。
あまり電圧がかからないので耐圧は5Vもあれば間に合います。ここの容量は低域に影響があるので470uFから下げない方がよいでしょう。耐圧や容量が増えるとコンデンサのサイズも増えるのでなるべく抑えたいところですが、オーディオ用とされる物でちょうどいい物はあまりないです。
470uF十分ですが、今回は別件で不要になったUTSJ 16V 1000uFを使います。ニチコンのFGやKZは大きいためスペースが足りず、足も太いので通す事ができません。
ここのコンデンサは裏面にジャンパ線が配線してあるのですぐに見つかりまが、その線のせいで取り外しにくいです。
元のコンデンサは足の間隔が狭くサイズも小さいので、足を曲げて位置をうまく調整して取り付ける必要があります。ケースに収めると天井までの高さがあまりないので、取り付け時の高さに気をつける必要があります。
オペアンプ交換
オペアンプ周りの流れです。交換をするとヘッドホン・ライン両方の出力に影響が出ます。
I/V変換のSOPオペアンプ交換
耐圧±15V以上のSOPで2回路オペアンプが使えます。それぞれが片チャンネルに対応しているので、交換する場合は両方同じ物にする必要があります。
SOPの交換は手間がかかるので何を使うか悩ましいところですが、I/V変換に適したMUSES8920にSOP版(MUSES8920E)があるので、それを使う事にします。
購入したオペアンプ
そのMUSES8920Eが店頭では売り切れだったので代わりになりそうなNJM8901Eを購入しました。あとで調べてみると8920の廉価版になるそうです。
SOP外し作業
SOP交換練習と同じ要領で、オペアンプの足にフラックスを塗ってハンダを盛り、溶かしながら持ち上げます。作業が難航して周囲の状態が悪くなってします。
2個目はスムーズに外せたので、作業前に適当なジャンク基板で練習しておけばよかったかもしれません。2つ外したらフラックス除去液やジッポオイルで端子周りの掃除をしておきます。
SOPのハンダ付け
新しいオペアンプをハンダ付けします。端子のフラックスを塗り、オペアンプの向きを確認、足と端子の位置をそろえてから一箇所だけハンダ付けします。その段階で取り付けミスがないかチェックし、問題がなければ残りの足をハンダ付けしていきます。
ハンダ付けが済んだら周囲のチップ部品がハンダでブリッジしていないか目視し、テスターでオペアンプの足のショートがないのを確認、問題がなければ動作確認をします。
ノイズとハンダ不良
音は出ましたが以下の問題が起きました。
- 左チャンネルからブーンという大きなノイズが出る
- 右チャンネルからサーという小さなノイズが出る
- ボリュームを回している時にザザザというノイズが出る
左チャンネルを担当するIC4は目視だと問題がないように見えます。テスターでショートの確認をしましたがこれも問題なしです。ふと思いついてオペアンプの8本の足にフラックスを塗り、それから各足にハンダごてを3秒ずつ当ててみました。それから電源を入れてみると左のノイズはきれいになくなりました。
今度は右チャンネルを担当するIC11の各足にハンダごてを3秒ずつ当てるとノイズが止まりました。ボリュームを回した時のノイズもいつの間にか消えています。
最初にハンダ付けをした時、各足にちょんちょんと1秒足らずの一瞬だけコテを当てたのが原因で、しっかり熱が加えられずハンダ不良になっていたようです。
LPFとBuffer
耐圧±15V以上の2回路オペアンプが使えます。こちらも両方同じ物にする必要があります。オペアンプ1つでLPFとBufferをこなしているので、それぞれの機能を別のオペアンプに振り分ける事はできません。変換基板と1回路のオペアンプを組み合わせば各機能を個別に割り当てる事はできそうです。
試しにOP275GPに載せ替えてみましたが、どうもしっくりこないので元のOPA2134に戻しました。