Pioneer製低価格帯ヘッドホン(SE-Mxxxシリーズ)
2002年から販売されている、パイオニア製の低価格室内向けヘッドホンを扱います。
00年代前期の機種
下位にSE-M280、上位にSE-M380、380の派生でSE-M380JとSE-M555V、テレビ向けのSE-M380DV、周波数特性が後期と同じ仕様のSE-M777AVがあります。M380JはJoshinオリジナル仕様です。555Vと777AVはエディオンオリジナル仕様の製品で、系列店でのみ販売されます。
型番 | SE-M280 | SE-M380 | SE-M380DV | SE-M380J | SE-M555V | SE-M777AV |
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形式 | 密閉ダイナミック型 | |||||
周波数 | 5-25kHz | 5-28kHz | 5-29kHz | |||
抵抗 | 32Ω | |||||
入力 | 1200mW | 1500mW | ||||
感度 | 102dB | 105dB | ||||
driver | 希土類マグネット搭載口径40mmドライバーユニット | |||||
プラグ | 3.5mm+6.3mm変換プラグ | 3.5mm高耐久性プラグモールド+6.3mm変換 | 3.5mmタフネスプラグ +6.3mm | 3.5mm メタルプラグ +6.3mm変換 | ||
cable | 3.5m | 3.5m | 1.5m+4.5m | 1.5m+2m | 3.5m | 編み込み 3.5m+1.5m |
質量 | 225g | 205g | ||||
バンド | 平型 | 丸形 | ||||
housing | 00年代前期型 | |||||
パッド | レザータイプ | 高級ベロア調イヤーパッド | 低反発ウレタン採用ベロア調イヤーパッド | |||
pad厚 | 薄 | 厚 | 薄 | |||
付属品 | コードストラップ | コードストラップ | ||||
その他 | 音量調節 ステ/モノ 切替可能 | 高輝度シルバー光沢クリアコーティング仕上げ | ピアノフィニッシュ調クリアコーティング仕上げ | |||
型番 | SE-M280 | SE-M380 | SE-M380DV | SE-M380J | SE-M555V | SE-M777AV |
00年代後期の機種
前期型の形状をしたSE-MV280とSE-M280TVは、2010年の時点で販売されていたのでこちらに含めています。
下位に280の派生で業務用モデルのSE-MV280とTV向けのSE-M280TV、仕様上は280と同スペックのSE-M290、上位のSE-M390、390の派生でエディオン限定のSE-M999E5、シャープAQUOSのバーチャルサラウンド出力に特性を合わせたVR-HSB10があります。
型番 | SE-MV280 | SE-M280TV | SE-M290 | SE-M390 | SE-M999E5 | VR-HSB10 |
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形式 | 密閉ダイナミック型 | |||||
周波数 | 5-25kHz | 5-29kHz | ||||
抵抗 | 32Ω | |||||
入力 | 1200mW | 1500mW | ||||
感度 | 102dB | 105dB | ||||
driver | 40mm | |||||
プラグ | 3.5mm 堅牢プラグ +6.3mm | 3.5mm+6.3mm変換プラグ | 3.5mm メタルプラグ +6.3mm変換 | 3.5mm | ||
cable | 1.5m | 5m | 3.5m | 3.5m+1.5m | 3.5m | 6m |
質量 | 225g | 215g | 225g | |||
バンド | 平型 | 丸形 | ||||
housing | 00年代前期型 | 00年代後期型 | ||||
パッド | レザータイプ | ベロア調イヤーパッド | 低反発ウレタンベロア調イヤーパッド | 低反発ウレタン採用 レザータイプ | ||
pad厚 | 薄 | 厚 | 薄 | |||
付属品 | コードストラップ | ヘッドホンスタンド コードストラップ | ||||
その他 | ロゴ部分にUVコーティング加工 | 音量調節 ステ/モノ 切替可能 | ピアノ鏡面調光沢クリアコーティング | |||
型番 | SE-MV280 | SE-M280TV | SE-M290 | SE-M390 | SE-M999E5 | VR-HSB10 |
10年代中期の機種
下位にSE-M521、上位にCCAWボイスコイル採用のSE-M531があります。
型番 | SE-M521 | SE-M531 |
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形式 | 密閉ダイナミック型 | |
周波数 | 7-40kHz | |
抵抗 | 32Ω | |
入力 | 1200mW | 1500mW |
感度 | 97dB | 100dB |
driver | 40mm | |
プラグ | 3.5mm+6.3mm変換プラグ | |
cable | 3.5m | |
質量 | 220g | 215g |
バンド | 平型 | |
housing | 10年代中期型 | |
パッド | ソフトレザー | ベロア |
pad厚 | 薄 |
外観
このシリーズは世代や上位下位で見た目は若干異なりますが、似た作りをしています。
調節機能
ハウジングは反転できるぐらいに縦回転の幅が広いです。
横方向は若干回すことができます。バンドの伸縮により縦方向の調整ができます。
ヘッドバンド周り
アームは下位機種は平型、上位機種は丸型の形状をしています。平型は樹脂製、丸型チューブの中に金属アームが通っています。金属アーム自体は頑丈ですが、それを支える部分や付近は樹脂パーツでできているので壊れやすさは変わりません。
丸型より平型の方が深くかぶれて装着感が良いです。2010年代の機種は上位にも平型のアームが割り当てられています。
左が00前期の機種のバンドで右が00後期の物です。2世代目は幅が長くなっています。装着感ではなく、こうして並べることで違いに気づいたので、装着感に大きな差はなさそうです。
ハウジング
00前期、00後期、10中期の世代で形状が異なります。同世代は色やロゴの位置が異なります。ハウジング内のネジなどの位置も世代で異なるようです。
SE-M280とSE-555Vの00前期の機種2つです。M555の銀色はAH-D1000Sよりも明るい色合いです。
SE-M290とSE-M999E5の00後期の機種2つです。M999のピアノ鏡面調光沢クリアコーティングはなかなかきれいです。
世代によって位置が若干変わるPowerful Bass Ductです。臨場感あふれるリッチな力強い重低音を迫力いっぱいに再現し、ドライバーユニットの背面抵抗をダクトで安定化するそうです。音を出している時にふさいでも目立った変化は感じられません。
プラグ
プラグも機種によって異なります。
SE-M280とSE-555Vのプラグです。タフネスプラグのM555プラグだけでなくケーブル直径も3.8mm(M280やM290は3.0mm)で太めになっています。
SE-M290とSE-M999E5のプラグです。M999は金属プラグにケーブルは布巻(直径3.5mm)になっています。
偏ったアームの修正
何年か下敷きになっていたSE-M290のアーチ状の部分が、画像では右に偏った状態になっています。この状態で装着すると、うまくフィットしません。
ビニール紐を適当に1周巻いて蝶結びにします。その状態からアームの偏った側の紐を持ち上げます。そうすると逆側に傾くようになります。
横回転を行う部分から下に紐を付けて負荷をかけると、結合部分に負荷がかかって破損につながります。紐はその上の部分に引っかけると良いでしょう。
しばらく放置すると偏りが直っていました。
イヤーパッド関連
イヤーパッドの着脱や種類・寸法などを扱います。
イヤーパッドの着脱
取り外し
イヤーパッドを外すには、パッドの下に指を滑り込ませ、手前側に引っ張って外していきます。
取り付け
パッドの裏側にはハウジングに引っかける部分があり、それをハウジングの縁にかぶせるように取り付けます。他のヘッドホンでも見られる取り付け方です。
ハウジングの横側の部分は左右で厚みが違うため、取り付け時はパッドの向きに注意する必要があります。パッドの裏側を見ると、左側と右側で引っかける部分の長さが異なり、短い方をハウジングの薄い方に引っかけます。
取り付けは、厚みのある方からハウジングの周囲にパッドをかけていき、最後はパッドの下に指を入れて引っ張りながらハウジングにかけます。取り付けたあと、パッドを左右に少し回してなじませます。
ハウジングのサイズ
00前期型SE-M280と00後期型SE-M290のハウジングのサイズです。
SE-M290の片側のパッドを外しSE-M280のパッドを取り付けてみました。このシリーズのハウジングのサイズは同じなので、パッドを相互に流用することができます。
イヤーパッドの素材と厚み
パッドの幅などの大きさはシリーズ共通ですが、素材と厚みに違いがあります。
素材
左のいくつか種類があるレザータイプと、右のベロアタイプがあります。レザーの方は経年劣化で表面がボロボロになる場合があります。
厚み
おおざっぱに分けて左の薄い物、右の厚い物があります。装着感に影響します。
各機種のイヤーパッド
手持ちの機種から取り外したパッドです。
SE-M280
10年以上経過していますが表面の崩壊は起きていません。厚さは10mmです。
SE-M290、SE-M555V
16mmと厚みがあり耳当たりのよいベロアパッドです。SE-M290はゆとりある平型アームに厚みのあるパッドのおかげで装着感が良好です。
パッドを外した時に、パッドを固定するのに必要な部分が外れてしまいました。この部分は他の機種も含めてパッド着脱時に外れやすく、外れてしまうとそのパッドは固定できなくなり使えなくなります。しかし、このパッドに関してはなくても取り付けが可能でした。
SE-M999E5
一時期妙に気に入って一ヶ月ほどよく使っていましたがそれっきりで、数年ぶりに取り出したら表面がボロボロになっていました。パッドの表面を掃除すると、ピアノ鏡面調光沢クリアコーティングハウジングと合わない色合いになります。
低反発ウレタン採用ですが、10mmと厚みがないため装着感への影響はあまりありません。
ハウジングの分解
画像はSE-M280ですが、同シリーズの他機種でも同様の手順で分解できます。
ハウジングを開く
イヤーパッドを取り外すとスポンジの付いた面が出てきます。接着剤で付いているスポンジを取り除くとネジが出てきます。ネジは片側に1箇所、反対側に2箇所の計3つあります。
ネジはスポンジを取り除かなくても、スポンジをめくれば外せます。手で押さえておかないとドライバがスポンジを巻き込むので指で抑えながら進めます。
ネジを外せばハウジングを開く事ができます。
ハウジングの中身
40mmドライバーユニットが見えます。
Powerful Bass Ductです。ネジを外すと取り外せます。ダクトは薄い紙でふさがれています。ダクト内のホコリを掃除する時、ティッシュでこよりを作って差し込んだら、抵抗なく紙に穴が開きました。耐久性はないので掃除する時は気をつけた方がよいです。
左ハウジングの下部からケーブルが引き込まれています。根元は固結びされ、ホットボンドで固定されています。
組み立て時、ネジをしっかり締めてもハウジングには隙間があります。隙間があるからとネジを締めすぎないようにします。パッドを付けると隙間は目立たなくなります。
ハウジング交換
今回はSE-M555Vが破損していますが、同じ作りをしている同シリーズの他機種でも同様のことは起きる可能性があります。
SE-M555Vの解体
ハウジングが本来向かない方向に向いています。結合部分のネジを固定していた部分が砕けて外れています。破損箇所を直すのは難しいので、SE-M290のアームにハウジングを移植してみます。
イヤーパッドを外します。ドライバー前のスポンジが劣化して崩れてきていたので、ついでに除去しました。
ドライバーユニットの赤い印がある方がプラス(赤線)です。ハンダごてを当てればすぐに外せます。両側面のハウジングを固定する部分は、内側から指で押せば外せます。
ハウジングを外したら溝に這わせてあるケーブルを外していきます。ネジ2本で固定されている、ヘッドバンドの固定部が邪魔になるので外します。ケーブルが通っている方の金属アームのネジも外します。右側だけでなく左側も同様にしてネジを外します。
金属アームの両側のネジを外し、その状態で金属アームを片側から押していくと、アームを取り外せます。金属アームがなくなればケーブルを外すことができます。
ケーブルを外していき、左ハウジングを固定してる側面のパーツを外します。こちらのケーブルのハンダ付けは外さずそのままです。これでM555の分解は終了です。
SE-M290のアームに取り付け
M555と同じ要領でSE-M290からハウジングを取り除いてアーム部分だけになりました。これからこれにM555のハウジングを取り付けます。
SE-M555Vのハウジングから出ているケーブルの、折り目が付いている部分をアームの直角に曲がっている部分に収めます。
直角部分にケーブルを収めたらハウジングを取り付けます。続けてバンド固定部の根本付近にケーブルの先端を通します。
ヘラなどの先端が細い物でケーブルを溝に収めていきます。
画像の通りにケーブルを通し、アームにケーブルを収めていきます。
ケーブルをどんどんと通していきます。
右ハウジングを取り付けて、ドライバーにケーブルをハンダ付けをします。
ドライバーにハンダ付けを行い、ネジ止めやパッドを取り付けて交換終了です。元の物より装着感が良いSE-M555Vができあがりました。
00前後期の違い
00前期と後期でハウジングの外側だけでなく内側も違いがありました。前後期の機種で、ハウジングの外側だけを交換することはできません。